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インピーダンスについての基礎知識

インピーダンスについての基礎知識

インピーダンス・インピーダンス測定基板についての基礎知識

インピーダンスとは交流回路における電圧と電流の比です。(単位はΩ) ある電気回路からの出力と、その次の電気回路への入力を接続する場合、それぞれのインピーダンスを一致させるのが原則です。
本来は同軸ケーブル(テレビのアンテナのような構造)で接続するのが最も安定するのですが、基板上でそれを再現するのがインピーダンスコントロール基板です。
プリント基板の場合、厳密には分布定数回路(距離の概念を導入した電気回路)における、電圧と電流の比、あるいは電界と磁界の比のことで【特性インピーダンス】と呼びます。

直流と交流の違い

我々が身近で使用している電気には、直流と交流があります。
壁のコンセントから取れる100Vの電源は交流、電池やアダプターから得られる電気は直流です。
直流電源は常に一定の電圧を維持している電源で、乾電池などは使用すれば電圧は低下していきますが、プラス方向の電圧であることは変わりません。
交流電源は一定の周期で電圧のプラスとマイナスが変化する電源となります。
家庭内で使用している電気機器は交流のままでは使用できない場合が多く、交流を直流に変換して電源供給しています。
また、小型の電気機器は100Vでは電圧過大であることも多いため、5~24V程度の小さな電圧に変換している場合もあります。
家庭内の電気機器が直流のものが主流なのに対して、コンセントから取れる電源が交流であるのは送電の問題からです。
交流電源は電圧を簡単に変換できるため、必要なところに必要な電圧の電源を供給できます。
直流電源は電圧を変換するのにコンバーターなどの設備が必要であるため、送電にコストがかかるため採用されていません。

基本知識

プリント基板においてインピーダンスコントロールをする場合に、よく出てくる言葉をまとめます。

  1. リファレンス(GND/グランド)
    インピーダンスコントロールをしたいラインがあるとして。そのラインにGはリファレンスが必要です。
    ラインとリファレンスの距離がインピーダンスに影響します。
  2. シングルラインと差動ライン
    1本の信号線だけで信号を伝送する方式のことをシングルエンド伝送と呼びます。
    それに対して1対の信号線を使って信号を先導する方式を差動方式と呼びます。
    シングルエンド伝送は構造が単純であることが利点です。
    差動伝送はシングルエンド伝送に比べて信号振幅を小さくできる分、電位差が小さく伝送速度を高速にできる特徴があり、現在は主流となっています。
    また、ノイズなどにも強く安定している特徴があります。
  3. マイクロストリップライン
    プリント基板においては表層のインピーダンスラインに相当します。
    信号線の片側をリファレンス層とした構造のことです。
  4. ストリップライン
    プリント基板においては内層のインピーダンスラインに相当します。
    信号線の上下をリファレンス層とした構造のことです。
    マイクロストリップラインよりも安定していますが、構造が複雑になるため特定の用途(携帯電話など)で使用されます。
  5. コプレナー導波路
    信号線に対して同層をリファレンス層とした構造のことです。
    片面だけでインピーダンスコントロールができるため、簡潔な構造でパターン配線ができるメリットがあります。
    その他に、フレキ基板などの厚みの薄い基板で使用されます。
    理由は後述します。

プリント基板における特性インピーダンスを左右する要素

いろいろと仕組みや構造がありますが、プリント基板を作成する場合にはインピーダンスを左右する要素というのは決まっています。 基本的には客先よりデータが届き、特定のラインを何Ωにコントロールしたいのか資料が届きます。 以下に記載する要素を変更して、客先の要求通りの調整をすることがインピーダンスコントロール基板です。

  1. 線幅、線間
    最も変更しやすい要素です。
    シングルラインの場合、線幅を大きくすればインピーダンス値は低くなり、線幅を小さくすればインピーダンス値は高くなります。
    差動ラインの場合、線幅を大きく、線間を小さくすればインイーダンス値は低くなり、線幅を小さく、線間を大きくすればインピーダンス値は高くなります。
  2. 銅はく厚み
    銅はく厚を大きくすればインピーダンス値は低くなり、銅はく厚を小さくすればインピーダンス値は高くなります。
  3. 信号線とリファレンスとの距離
    マイクロストリップラインとストリップラインの場合、信号線の層とリファレンスの層は別となっています。
    つまり層間距離がリファレンスの距離に該当します。
    リファレンスとの距離が大きくなるとインピーダンス値は高くなり、リファレンスとの距離が小さくなるとインピーダンス値は低くなります。
    フレキ基板の場合、通常の硬質基板と比較してリファレンスとの距離が小さくなりますので、どうしてもインピーダンス値が低くなってしまいます。
    これを客先の要望に合わせようとすると、インピーダンス値を高くするために線幅を小さくしなければなりません。
    そうすると場合によっては線幅を50μ程度で仕上げなければならず、製造が困難となります。
    その場合、リファレンスを信号線と同層にするコプレナー構造を適用することがあります。
  4. 比誘電率
    材料特有の比誘電率です。
    基本的に客先より材料は指定されますので変更のしようがありません。
    比誘電率が大きいとインピーダンス値は低くなり、比誘電率が小さいとインピーダンス値は高くなります。
  5. レジストの厚み
    マイクロストリップラインの場合、レジストの厚みもインピーダンス値を左右します。(あまり大きな影響はありませんが)
    レジストの厚みが大きいとインピーダンス値は低くなり、レジストの厚みが小さいとインピーダンス値は高くなります。

インピーダンスシミュレーション

前述しましたインピーダンスを左右する要素を入力すると、自動的にその構造で基板製造した場合のインピーダンス値が算出されるソフトがあります。
逆にインピーダンス値を入力することで、線幅や線間を算出できたりもします。
ケイツーではポーラーインスツルメンツのSi8000を使用しています。
これにより、基板作成前に層構成や線幅、線間を確定できるので実際に基板を製作して想定のインピーダンス値から外れることは激減しました。

インピーダンス測定

客先によってはインピーダンス測定をおこなって、数値を保証しなければなりません。
測定器のプローブの形状の問題で基板内のラインを直接測定することはできませんので、基板内のルールと同じ構成のテストクーポンを基板製品外(ワークの端)に配置し、それを測定します。
測定器はポーラー社:CITS8000を使用しております。
50Ωの標準板をまずは測定し、微調整をおこないます。
調整後、テストクーポンを測定し50Ωとの比較によって、正確なインピーダンス値が出されます。

インピーダンスシミュレーションのテクニック

インピーダンス値として多いのが、シングルだと45Ω、50Ω、75Ω、差動だと90Ω、100Ω、120Ωです。
例えば外層ラインをコントロールする際、PPを0.2㎜とすると、45Ω:475um、50Ω:391Ω、75Ω:154umです。
PPを0.1㎜とすると、45Ω:220um、50Ω:179Ω、75Ω:61umとなります。
PP0.2㎜を使用すると、45Ω、50Ωの線幅が太すぎて設計しにくい、PP0.1㎜を使用すると75Ωの線幅が細すぎて歩留りが悪くなるということがあります。
その場合、外層のPPは0.1㎜を使用しますが、75ΩのラインのみリファレンスをL3層とするように設計をおこないます。
そうすると75Ωラインのみ層間厚みが大きくなり、設計しやすく、かつ歩留りも良いルールで基板製作が可能となります。

資料など御座いましたら、弊社より
該当パターンの ライン/スペース(L/S)の計算を作成させて頂きます。

その他の注意

上述以外でプリント基板のインピーダンスコントロールでの注意点を記載します。

  1. インピーダンス測定が必要な場合、テストクーポンが必要です。
    テストクーポンの大きさは10㎜×75㎜が標準ですので、インピーダンスコントロールが必要な仕様の種類の数だけテストクーポンを配置しなければなりません。
    そのため、ある程度余裕を持って面付けは考えなければなりません。
  2. 高周波の場合
    これまでの説明は基本的に無損失を想定しています。(ほとんどの場合はそれで良いのですが)
    インピーダンスコントロールの場合、厳密には伝送損失というのを考慮しなければなりません。
    高周波回路であればあるほど伝送損失は大きくなり、狙いのインピーダンス値と異なる場合があります。
    残念ながら伝送損失も考慮してのシミュレーションは現在所持しているソフトでは対応できません。
    客先より伝送損失のシミュレーションについて聞かれた場合、社内では対応できません。 ただ、頻繁でなければポーラーインスツルメンツに頼めばSミュレーションはおこなってもらえます。
    その場合、左右する要素として材料の誘電正接とコントロールラインの長さ、交流回路の周波数の情報が必要となります。

最近の傾向

最近は高周波対応の基板が非常に増えております。
伝送損失が影響することは多く、各材料メーカーが低誘電率材を販売しております。
比較的よく使用される材料を記載します。

【パナソニック】
・R-5775:比誘電率3.7(1GHz)
現在使用することの多い、MEGTRON6です。
他の基板メーカーでは材料取寄せとなりますが、ケイツーではコア、PPともある程度のラインナップを常備しております。
コア材:0.1t、0.2t、0.3t、0.4t、0.63t、0.75t
PP:0.06t、0.1t
銅はく厚は全て18um、ワークサイズは340×510です。
尚、注文する際には樹脂量の指定も必要です。
・R-5775(N):比誘電率3.4(1GHz)
上述のMEGTRON6のガラスクロスを低誘電ガラスにしたものです。
・R-5725:比誘電率3.8
MEGTRON4です。
世界的には最も売れているそうです。
・R-5785:比誘電率3.6(1GHz)
MEGTRON7です。
まだ完全に仕様は固まっておりませんので、有償サンプルとして提供されることが多いです。
低誘電ガラスを使用したNタイプもあります。

【利昌工業】
マニアックな方から良く指定があります。
マイナーですが、MEGTRON6以上の特性のある材料があります。
・CS-3376B:比誘電率3.4
・CS-3376C(両面基板限定):比誘電率3.3
その他高誘電率材もラインナップされております。
・CS-3396:比誘電率11.3

【その他テフロン材】
多くはガラスクロスではなく、ガラスマット+フッ素樹脂の構成です。
比誘電率は多岐にわたり、2.0を下回る材料も存在します。

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